愛想笑い教育講座

諸事情によりブログ名変更。23歳Gカップの美女だと思って読んでください

祖父とのランデブー

相変わらず親知らずを抜いた穴がズキズキと痛み、冷たい飲み物を飲んでも形容しがたい痛みが右頬周辺をほとばしる。 あの親知らずは果たして僕にとってなくてはならないものだったのではないかと思案を巡らすが、答えなんて出るはずもなく。 時折ご飯粒や麺類が穴におさまることがあるので、これは取り除いてやらねばならない。 つまようじも歯ブラシも歯茎をガシガシやるのが怖くて使えないため、うがいが欠かせないのだ。 うがいといっても目の前の飲み物を口に流し込んだら、グシュグシュとやって飲み込む。 牛乳でもお茶でも何でもござれ。 こうなると祖父、シュンジを思い出す。 島根にある実家を訪れると、いつもシュンジはニコニコと出迎えてくれた。 口数は少ないが威圧感などはなく、ニコニコニコニコ常に口角をあげているのだ。 夕食、決まってシュンジはチーズ一切れを食べ、ウィスキーをツーフィンガーだけ飲む。 少しずつ少しずつ嗜んで、食事の終わりとちょうど同じタイミングでウィスキーのグラスを渇かす。 そして冷蔵庫からお茶を取り出したらば、誰がいようとお構いなしにグシュグシュやって飲み込む。 シズコはいつもいつも「みっともない」と言うが、言葉に力が入っていないよ、ばあちゃん。 きっと数十年同じことを繰り返してきたんだろう、これはこれで、ほほえましい。 そんなシュンジは7年前の大晦日に大往生を遂げている。 前年にシズコが死んでから施設に入っていたが、正月だけは、と自宅に帰ったらそのまま眠るように死んだそうだ。 だから僕はこの親知らずの穴に詰まった食べ物を、飲み物でグシュグシュやっているときには少しだけシュンジを感じることができるのだ。 シュンジが死んで以来心にポッカリと空いた穴は、皮肉にも親知らずの穴が埋めてくれる。 んなわけあるか!!!!