愛想笑い教育講座

諸事情によりブログ名変更。23歳Gカップの美女だと思って読んでください

夏祭りは心の殺人だ

500ml缶をあけた僕は眠りについていたようだ。

 

気付けばジリジリ照らしていた陽は沈み、登米の街は真っ赤に燃えていた。

 

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あと1時間もすればこの街も夕闇に没する。
遠くから聞こえるはずのヒグラシの声は、河川敷の喧騒にかき消され、やがてスピーカーから流れてくる盆踊りの音頭は我が街に祭りの始まりを告げた。
商店街に吊るされた提灯に明かりがともり、「夏祭り」の文字が浮かび上がっている。

 

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もう10年も北海道に住んでいるだろうか。
土着的文化が薄い北海道では、夏祭りというものは極最近に勃興したものであり、地域挙げてのイベントとは成り難い。
いや、確か中島公園北海道神宮あたりでは大きなお祭りがあった気がするが、あれは若者ばかりが集い、従来の信仰や祈りを目的とした祭りの本質とは少し異なる。気がする。
今時そういったものを目的として参加する人はごく少数であるとは思うのだが、ともかく北海道とこちらの祭りは異質な何かを感じる。
そういうわけで、僕を駆り立てたその異質な何かは、10年以上ぶりの祭りへの参加を促した。

 

あの頃僕らは女子と出会うかもしれないという期待感から、ベタベタに整髪料を塗りたくり、目いっぱいのおめかしとしてピコのTシャツなんかを着たらば、夕方6時にカエル公園にて待ち合わせた。
結局女子とはすれ違っても声をかけることなんてできるはずもなくって、流し目でそれをやり過ごし、無為に屋台の前を往来する。
限られたおこずかいを握りしめながら、通りを3往復なんてしちゃってな。

 

「藤野と広瀬が付き合ってるらしいぜ」

 

って。お前それ今更かよ。みんな知ってるぞ。

 

女子グループと一緒にお祭りに行けたところで、結局は男子、女子グループで別れて行動しちゃう。
そりゃそうだよ、10人でお祭りだなんて動きづらいもん。
グループ内で一人だけPHSもってるやつに連絡させて合流したって、まともに会話もできないくせに。



そんなことを思いながら河川敷と商店街をそぞろに往来していた。
ニガミ17才のTシャツとYONEXの半パン、つっかけをはいて、缶ビール片手に。
すれ違う人々は皆カップルか家族連れ、友人同士であった。
笑顔で細めた皆の目には僕の姿は映っていないだろう。
きっと、僕の姿を視認できたのはパトロール中の警備員だけであったと思う。
宵闇に溶け行く河川敷で、二人ならんで夕涼みしている浴衣姿のカップルは川下の灯篭流しを見ている。
ここ何日かの日照りで、川の一部は河床が露見して流れを失っている。
灯篭の灯に朧に照らされた川面は、夜が深くなるにつれて色濃く映えてゆき、緩やかにたゆたう。


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「来年も一緒に見れるといいね。」



なんて話声が聞こえてきたら、涙が出てきたかもしれない。
僕の心はいつから濁ってしまったのだろう。
落涙が川面に波紋を作るようなことがあれば、川が濁ってしまうのではないか。
無邪気な笑顔を振りまいて駆けずり回る少年に昔の僕はしっかり重なることができるのに。
汚れちまった悲しみに。

 

歩くのも疲れたころ、ちょうどいい高さの河川堤防に腰かけて涼んでいると、花火が始まった。
ドンドンと打ちあがる花火に合わせて、スマホの画面越しに人々の顔が照らされる。
楽しみ方はそれぞれだって、わかっちゃいるけど物悲しい。

 

僕は花火を途中で切り上げて、家で一人汚い花火を打ち上げる。
金玉はもうパンパン。
準備はいいかな。

 

タマや~~

 

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